【ラノベチャレンジ】虎走かける『ゼロから始める魔法の書』1巻を読む

先日、虎走かける『ゼロから始める魔法の書』1巻を読了した。

ゼロから始める魔法の書 (電撃文庫)

新品価格
¥584から
(2021/7/21 22:11時点)

人間になることを夢見る半人半獣の傭兵が、世間知らずの魔女・ゼロや幼き魔術師・アルバスと出会い、魔法について書かれた【ゼロの書】を求めて旅をする“王道”ファンタジーだ。

ストーリーは面白かったし、文章も読みやすかった。そういう点で文句は全くないのだが、僕は「“王道”とは何か?」がとても気になった。

作者はあとがきで「この話はベタベタの王道展開を突っ走る、いわゆる剣と魔法のファンタジーです」と述べている。

剣と魔法が出てくる――というよりも、魔法がメインテーマのストーリーであるのは確かだ。しかし、読後に強く印象として残ったのは、魔法がどうこうよりも、登場人物たちの会話や交流だった。「剣と魔法のファンタジー」という設定を学園ものやSFなどに置きかえてもストーリーは成り立つと思った。

僕は、「剣と魔法のファンタジー」は世界観で読者を魅了するものだとずっと思っていた。昔のRPGのように、キャラクターにはこれといった個性がなく、ひたすら剣と魔法を使って敵と戦う、みたいなのをイメージしていたが、それは僕の先入観だったのだろう。

『ゼロから始める魔法の書』に限らず、最近読んだラノベの多くは、世界観よりも登場人物の魅力で読ませるものが多い。世界観は登場人物を引き立てるものに過ぎず、時としてご都合主義に流れてしまう。それが良い悪いと議論したいわけではなく、最近のラノベの特徴はこうなのだろうというだけの話だ。

他には、『ゼロから始める魔法の書』に純粋な悪が存在しないのが印象的だった。

解説には「この作品には人の善性が溢れています」とある。主人公に敵対する者たちも最終的には主人公と和解し、ハッピーエンドに終わる。これを「優しい」と捉えるか「ぬるい」と捉えるかは好みの問題だろう。Amazonにはこの点に関して酷評するレビューもあったが、僕は決して嫌いではない。当初は敵対していた登場人物が主人公の仲間になっていくのは、ある意味“王道”だとも思う。

最後に、『ゼロから始める魔法の書』が多くのティーンズに受け入れられた理由は、「美魔女×ケモノ」という珍しい主人公たちだったのではないだろうか?

「美女と野獣」は有名なおとぎ話だが、これに連なるものをラノベに持ち込んだのは斬新だったと思われる。以前コミケでコスプレイヤーを写真撮影させてもらったとき、ゼロと傭兵はひときわ目立っていた。とにかく目立つし、読者の興味を引きやすいのだろう。

純粋に面白かったが、それとは別のところでいろいろ考えさせられた。「“王道”とは何か?」に対する一つの解答が提示されている作品といえる。

タイトルとURLをコピーしました