アフリカ座第19回本公演『KAI OF THE TIGER〜武田信玄〜』千秋楽

アフリカ座第19回本公演『KAI OF THE TIGER〜武田信玄〜』千秋楽をようやく視聴できた。

急な仕事が入ってリアルタイム配信を視聴できなかったのは残念だったが、翌日の夜中にアーカイブを観て、一人で感動と興奮に悶えていた(笑)

約2時間でスピーディーに進む展開の中に笑いあり涙ありで、ワンシーンも見逃せない楽しさが詰まっている。一瞬たりとも目を離せないのだが、オンラインなので一時停止したり巻き戻したりできて、じっくり観劇できるのがうれしい。

そして、何度も観直したくなる名シーン・名セリフの数々――。僕はPC画面の前から動けなくなった。

アフリカ座のオンライン配信はこれまでにも何度か観てきたが、回を重ねるごとに進化しているのがわかる。

「劇は劇場で観るものだ」という常識を覆すオンラインならではの魅力が盛り沢山だ。

たとえば、演者さんがカメラに大接近して、視聴者に語り掛けるようにセリフを言うシーンがある。息遣いだけでなく、ライトの光を反射する汗粒まで見えて、情熱が画面越しに伝わってくる。

ステージの斜め上や斜め下など、劇場の座席からは絶対に見られないアングルのシーンもあり、視点が変わる楽しさを堪能できる。自分が神様になって俯瞰しているような興奮を味わえる。

劇場で他の観客と一体感を味わいながら鑑賞する劇はもちろん楽しい。しかし、アフリカ座の場合、劇場で観るのも、オンラインで観るのも、どちらも捨てがたい。というより、どちらも楽しむのが正解なのだろうが、コロナ禍で劇場に行けないので残念……。

ストーリーも秀逸だ。戦国時代を背景に、戦国大名の武田晴信(武田信玄)と長尾景虎(上杉謙信)の2人を軸として、それぞれの家臣や関係者の活躍や心理を丹念に描き出していく。

劇中の長尾景虎は女性だ。戦を通して武田晴信が長尾景虎に惹かれていく、ある種の恋愛劇とも解釈できる。史実や通説とは異なる部分も多々あるのだろうが、そこが劇の個性となって観客を引き付ける。戦国時代においても血の通った人間同士の心の交流があったはずだし、それを劇という形で、現代人である僕たちでも共感しやすいように見せてくれる。

登場人物それぞれが個性豊かで、誰一人として「単なる脇役」で終わらないのもアフリカ座の劇の特徴だ。

何よりも嬉しかったのが、推しの女優である若林美保(わかみほ)さんが長尾景虎役だったことだ。

これまでのアフリカ座の劇でも、若林美保さんはストーリー進行に欠かせない重要な役割を担ってきた。美しい舞いを披露し、ステージに華を添えることも多かった。そして、『KAI OF THE TIGER〜武田信玄〜』では、ヒロインの位置づけの長尾景虎を若林美保さんが演じたのだ。

若林美保さんは美しさとかっこよさを兼ね備えている。美しさはいうまでもないのだが、今回はかっこよさが前面に出ていた。特に、尼僧姿で家臣たちと話し合ったり、武田晴信と対峙したりする後半のシーンがかっこよ過ぎる。僕の体は感動でゾクゾクっと震えてしまった。

こんなにも美しくてかっこいい長尾景虎と出会ったら、劇中の武田晴信でなくとも一目惚れするだろう。たとえ、命懸けの戦いの最中であったとしても。

若林美保さんの新たな一面を見られたという意味でも、わかみほファンには嬉しい劇だった。

僕は歴史に疎く、戦国時代にも興味は無かった。しかし、『KAI OF THE TIGER〜武田信玄〜』観劇後、戦国武将の生き方が気になり始めた。知的好奇心をかき立ててくれるのもアフリカ座の劇の魅力だ。歴史が好きな人でも歴史が好きではない人でも、その世界観に引き込まれる。個性豊かな登場人物たちのことをもっと知りたくなる。

『KAI OF THE TIGER〜武田信玄〜』は、どんな人にもオススメできる最高のエンターテイメント作品だ。

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