『これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』展内覧会レポート公開

河鍋暁斎は、幕末から明治の激動期に生きた絵師です。暁斎の作品を集めた大規模な展覧会『ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』が、2017年4月16日(日)までBunkamura ザ・ミュージアムで開催中です。

本展では、画商のイスラエル・ゴールドマン氏が所蔵する暁斎コレクションの中から、約180点が出展されています。貴重な初摺の浮世絵や世界に一点しかない席画など、上質の暁斎作品を楽しめる展覧会です。

本展の開催に先駆けて、2017年2月22日にプレス内覧会が開催されました。その内覧会を「妖怪」の視点で取材したレポートが、エンタメ特化型情報メディア「スパイス」にて公開中です。

妖怪業界の有名人・河鍋暁斎

河鍋暁斎といえば、妖怪業界(?)の中では有名人です。というのも、暁斎は、数多くの妖怪画・幽霊画を残しているからです。

僕が暁斎を知ったのは高校時代ですが、そのきっかけも妖怪でした。京極夏彦・多田克己『暁斎妖怪百景』(国書刊行会)という画集を購入し、暁斎の描いた妖怪たちに見入りました。

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暁斎は「妖怪」関連で話題に登場することの多い絵師です。たとえば、椎橋寛『ぬらりひょんの孫』には、主人公と敵対する江戸百物語組の幹部として、「鏡斎」という妖怪が登場します。絵を描くことで新たな妖怪を生み出すという設定の妖怪です。明らかに暁斎ですね。(下の表紙に描かれているのが鏡斎です)

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このように、暁斎といえば妖怪のイメージが強く、そのことが国内での暁斎の評価を貶めたともいわれます。「暁斎は妖怪の絵ばかり描いている」と軽んじられ、暁斎は一時期忘れ去られました。

歌川国芳と狩野派から受け継いだもの

暁斎は、国内で評価されない時期にあっても、海外では高い評価を得ていました。葛飾北斎と並ぶ天才絵師として、多くのコレクターたちに愛されてきたのです。こうした海外での評価とも相まって、近年、暁斎は国内でも再評価されています。

暁斎は、妖怪に限らず、あらゆるジャンルの絵を描きました。その多才ぶりの根底にあったのは、歌川国芳と狩野派に学んだ経験です。

暁斎は7歳で浮世絵師歌川国芳に入門しました。その後、狩野派に移り、19歳で免状を得ました。反骨の精神を軸とする“異端”の歌川国芳と、代々幕府に重用されてきた“正統”の狩野派。“異端”と“正統”の両方から学んだ暁斎だからこそ、価値観の揺らぐ時代でも強かに絵を描き続けられたのです。

“異端”と“正統”が同居する暁斎作品の魅力は、現代でも色あせません。たとえば、「第4章 戯れる」では、伝統的なモチーフである鍾馗や風神などの神様が戯画化され、ユーモラスな表情を見せています。「第6章 祈る」の達磨図や仏画と見比べてみると、暁斎ならではの視点で描かれた絵と伝統を踏襲した絵との対比が際立って面白いですよ。

笑いを生み出す天才が描く風刺画や春画

「第3章 幕末明治」では、神様や妖怪、動物たちが滑稽な姿を演じています。明治維新を痛烈に風刺した作品でありながら重苦しさがありません。暁斎はどんな状況をも笑いに変える天才なのです。

それは、「笑う 人間と性」の章で見られる春画にも通じます。達磨が花魁の股下をくぐったり、天狗の鼻が女性器を貫いたり、女と狐がまぐわっていたり……不謹慎というか何というか、暁斎らしいブラックユーモア満載です。これらの作品を子どもが見られないのは残念ですね(笑)

スパイスのレポートでは、妖怪画を中心に紹介しています。しかし、本展の見どころは「妖怪」にとどまりません。絵に生涯を捧げた暁斎の熱い魂と暁斎が生きた時代の空気を、皆さんも会場で味わってください。

内覧会だけでは十分に本展を堪能できなかった僕は、今度はお客さんとして、もう一度足を運びたいと思います。

『これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』展 「妖怪画」から、河鍋暁斎のユーモアを感じる | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス
2017年4月16日(日)までBunkamura ザ・ミュージアムで開催される『ゴールドマン コレクション これぞ暁斎! 世界が認めたその画力』は、イスラエル・ゴールドマン氏所蔵の作品を通して河鍋暁斎の全貌に迫る展覧会だ。プレス内覧会より、...
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