デビュー50周年記念 諸星大二郎展 異界への扉@三鷹市美術ギャラリー

2021年10月5日、三鷹市美術ギャラリーで開催中の「デビュー50周年記念 諸星大二郎展 異界への扉」へ足を運んだ。

実は、予約の日にちを間違って前日にも三鷹市美術ギャラリーを訪れ、ギャラリーが休館日だった――という悲劇に見舞われたのは内緒の話。800円の交通費と数時間を無駄にしてしまった……。

それはさておき、僕が諸星大二郎先生と出会ったのは高校時代。友人が貸してくれた『マッドメン』がきっかけで、諸星ワールドへと足を踏み入れた。

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民俗学や人類学などの知識を織り交ぜた重厚なストーリーと独特の絵柄に魅了され、諸星作品を何冊も読み漁ることに。特に『妖怪ハンター』シリーズや初期短編集が好きだった。

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そんな諸星先生との再会とでもいうべき展覧会だった。

会場内には、諸星先生の漫画作品の原画とその元ネタとなった資料が展示されていて、東京の片隅が異界化しているような趣があった。

『妖怪ハンター』シリーズの名場面の原画を前に、十代の頃に味わった感動を再び味わうことに――。「闇の客人」の「鬼踊り」のシーンや、「産女の来る夜」の産女登場シーン、「生命の木」の昇天シーン、「海竜祭の夜」のあんとく様が襲いかかってくるシーン……。どれも鮮明に覚えているが、その原画を間近で見られるのが貴重な機会だった。

「不安の立像」に登場する、線路脇に立っている黒い影法師。「遠い国から・追伸 カオカオ様が通る」に描かれる異形の巨人・カオカオ様。人間とモノが融合してしまった「生物都市」。こうした異形の存在は不気味である一方で、どことなく懐かしさというか、親しみを感じるのは、諸星先生の絵柄だからだ。

しかも、異界や異形の存在の中には元ネタがあるものもあり、会場で資料と比較してみると、「なるほど」と納得させられる。諸星作品の代表とでもいうべきヒルコは、サルバドール・ダリの《内乱の予感》が発想の原点だ。諸星作品の「失楽園」に出てくる「快楽の沼」は、ヒエロニムス・ボス《快楽の園》がヒントだという。こうした背景を知ると、学生時代とは違った漫画の味わい方もできるようになって面白い。

会場を一周するだけでもかなり見応えがあり、僕は約2時間、諸星ワールドを散策した。このときに自分自身を振り返り、「創作系の文章が書けないのは、純粋に知識不足のせいだ」と実感した。

諸星作品を読み漁っていた当時は、いろいろ知りたくて、心理学や宗教などの本も読んでいた。今はさっぱり本を読めていない。本だけでなく、漫画や映像作品も見なくなってしまった。買うだけ買ってそのまま……というものも多い。これでは思考がどんどん狭まるし、それ故に自分は昔以上に詰まらない人間になってしまった。

諸星大二郎先生は豊富な知識をもとに自らの世界観を確立した。優れた作品の背景にはインプットがあるのだ。だからこそ、多くの読者が魅了され、カルト的なファンを獲得するに至ったといえる。何もないところにポンッと諸星ワールドが誕生したわけではない。

諸星大二郎先生との再会をきっかけに、自分自身を見つめ直す機会も得られた。これから自分が何をすべきかも見えてきた気がする。まずは、部屋にある諸星先生の漫画を読むことから始めたい。

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