尊敬する身体改造ジャーナリスト、ケロッピー前田さんからの紹介で、昨夜、「SAEBORG「LIVESTOCK」SUPER SPECIAL!!!」を視聴した。
2020年6月4日(金)~20日(日)に渋谷PARCO Museumで個展『LIVESTOCK』を開催中のアーティスト、サエボーグさんの活躍の軌跡を辿っていくトークショーだ。ケロッピー前田さん他、DJのTKDさん、デパートメントHオーガナイザーのゴッホ今泉さん、ラバリストの方々といった豪華なゲストが出演して、サエボーグさんについて話を盛り上げた。
サエボーグさんはラテックス製のボディスーツを自作し、それらを装着してパフォーマンスを展開する。そのユニークな世界観は、一度見たら忘れられないインパクトがある。
屠殺された豚や毛皮を刈り取られる羊、ウ●コを解体するフンコロガシ……。
タブー視されがちな対象を可愛らしくもフェティッシュに造形し、パフォーマンスを披露して、観客とともに盛り上がる。ユーモラスな一方で、現代社会に対する強烈なアイロニーが潜んでいる。
サエボーグさん自身だけでなく、ゲストの皆さんがそれぞれの視点から、サエボーグさんのアートの魅力や背景を語り尽くした。他の追随を許さない天才的な表現の根底にあるものが浮かび上がってくる。
サエボーグさんは、日本最大のアングライベント「デパートメントH」に飛び込んで、そこから頭角を現していった。年一回「大ゴム祭」を開催して、その後国内外からオファーが殺到するまでになった。
僕は大ゴム祭を何度か取材して記事にした。毎月開催されるデパートメントHの中でも最も盛り上がるお祭りは、サエボーグさんによって支えられていたのだ。僕はその場にいて、ステージのすぐ近くで、熱意と、ラバーの匂いを五感で受け止めていた。
あのお祭りに参加できたこと。しかも、取材までさせてもらえたこと。僕の人生の中では、かけがえのない財産となっている。
「好き」をアートやファッションに昇華する皆さんの姿が純粋に「かっこいい!」と思った。自分にはできないことをしている皆さんが羨ましかった。そんな世界の一端に自分が関われたことは誇りだった。
そして、その中心にはサエボーグさんがいた。
僕の時間は2018年の大ゴム祭で止まっている。
あのとき返し忘れたデパートメントHの取材許可証は今でも持っている。「いつか返さないと……」と思いつつ、「仕事が忙しい」と言い訳して足を運べず、まだ返せていない。そして、コロナ禍になって……。
僕の時間は止まっていたが、サエボーグさんは世界的に活躍していた。オーストラリア・タスマニア州の祭典“Dark Mofo”で現地の人々を熱狂させ、他のアーティストたちを魅了した。国内での活躍については僕も知っていたが、そこからさらに海外へと羽ばたこうとしていた。
サエボーグさんだけでなく、僕が好きな世界は確実に動いていた。僕が目を離している間に。
「好き」を追及して、それをアートやファッションとして表現し、多くの人々を魅了する。そんなかっこいいアーティストさんたちと、僕は何年か前までは交流させてもらっていた。当時は人生が本当に楽しかった。それが今では……。
「SAEBORG「LIVESTOCK」SUPER SPECIAL!!!」を視聴したことをきっかけに、楽しかった過去を思い出した。自分が好きなものを再認識させられた。人生を仕切り直そうと思っていた時期にドンピシャだ。
「LIVESTOCK」は必ず見に行くつもりだ。