【新春えびすリアリズム】蛭子能収が誘うポップでシュールな大展覧会

高校時代、僕は蛭子能収のマンガと出会った!

高校時代、僕は、倫理担当のK師にお世話になりました。2年次のクラス担任であり、受験期には小論文も添削してもらいました。そんな大恩人のK師は、何といいますか、ちょっと変わった先生でした。変人の僕が言うくらいですから、K師は本当に変わっていたんです!

1年次の倫理の授業は、後半が原一男監督『ゆきゆきて、神軍』の鑑賞。『ゆきゆきて、神軍』といえば、さまざまなスキャンダルで有名な奥崎謙三を追いかけたドキュメンタリー映画です。かなり狂気じみた作品で、多感な高校1年生にこれを見せるあたり、K師の危険度が分かりますね(笑)。

倫理教師が貸してくれた『地獄に堕ちた教師ども』

ある日、K師が僕に1冊のマンガを貸してくれました。蛭子能収『地獄に堕ちた教師ども』でした。

新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~

これをきっかけに、僕は、K師からさまざまなマンガを借りていきました。丸尾末広、花輪和一、ねこぢる、山野一、ひさうちみちお……ガロ系アングラ漫画家のオンパレード!こうして僕はアングラの闇へと堕ちて行きました、めでたしめでたし!!

……って、話が終わっちゃいけませんね。ここからが本題。そう、蛭子能収ですよ、蛭子能収!

「ひるこのうしゅう」っていったい何者?

僕は、K師から『地獄に堕ちた教師ども』を借りてしばらくの間、「蛭子能収」を「ひるこのうしゅう」と読んでいました。地元のトップ進学校に通う僕の頭をしても、「蛭子能収」は「ひるこのうしゅう」でした(笑)。

その後、僕は「ひるこのうしゅう」が気になって、「蛭子能収」のマンガを少しずつ蒐集していきました。絶版の本ばかりなので、ブックオフで探して何冊かゲットしました。その中でもインパクトが強かったのが『狂ったバナナ (シュール・ド・エロ)』。タイトルからして18禁ですが、もちろん内容も18禁。とはいえ、絵柄が絵柄ですから、性的にどうこうというのは無く、僕は、純粋に「面白いなぁ~」と思って読んでいました。

このあたりで、「蛭子能収」は「えびすよしかず」と読む、と僕は気付きました。高校2年の秋の出来事でした。更に数年後、僕の頭の中で、漫画家の蛭子能収とテレビに出演している「えびすさん」とが一致。シュールなエログロマンガと「えびすさん」の柔和な笑顔とのギャップに、僕は「ウホッ!」となりました。

天性の才能に恵まれた蛭子能収

僕の高校時代は、甘酸っぱい、というか、汗臭くてイカ臭い思い出ばかり(何せ男子校だったんでね(笑))。そんな青春の一コマを象徴するのが蛭子さんのマンガです。

『地獄に堕ちた教師ども』とか『狂ったバナナ (シュール・ド・エロ)』とか、おまえ、どんな青春を送ってたんだよ?――というツッコミは要りません(笑)。とにかく、僕の青春は蛭子さんなんですっ!!

復活版 地獄に堕ちた教師ども

新品価格
¥1,540から
(2022/12/10 10:54時点)

……とグダグダな「青春」を思い出しながら、2016年1月3日、僕は渋谷パルコへ足を運びました。「新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~」を観るためです。

蛭子さんは漫画家でタレントでギャンブラーで……

ここで改めて蛭子能収さんを紹介。

新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~

蛭子さんは、1973年、伝説の漫画雑誌『ガロ』で漫画家デビュー。独特な画風で「ヘタウマ」というジャンルを確立。つげ義春「ねじ式」の影響を受け、不条理な世界観を描き続けます。日本のサブカル&アングラ漫画界を代表する偉大な漫画家です。

最近ではテレビ番組への出演が多い蛭子さん。いつもニコニコ笑顔を絶やさない癒し系タレントです。大のギャンブル好きとしても有名で、麻雀やパチンコなどを特に愛好しています。

大器晩成型・蛭子さんの「えびすヒストリー」

「新春えびすリアリズム」入り口付近には、「えびすヒストリー」があります。それを見ていくと、蛭子さんは大器晩成型だったことが分かります。

新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~

『地獄に堕ちた教師ども』が青林堂から発行されたのは、蛭子さんが35歳のとき。長年の夢だった映画監督としてデビューを果たすのは、何と56歳のとき!

僕は、蛭子さんの人生に自分のこれからを重ね合わせ、ちょっとだけ夢を見させてもらいました。僕ごときが天才の蛭子さんに追いつけないのは百も承知。それでも、いつまでも芽が出ない三十路の僕は、蛭子さんの活躍に励まされるんですよね。

「新春えびすリアリズム」潜入レポ

前置きが長くてすいませんね。まあ、お金をもらう取材記事じゃないので、駄文が続いても、誰からも文句は言われないでしょう(笑)。

というわけで、いよいよ「新春えびすリアリズム」へ潜入!

1月3日は、蛭子さんの似顔絵サイン会の日。会場には蛭子さん本人の姿が!

小さな女の子の似顔絵を描き終わった蛭子さん。その女の子のお母さんが、娘さんと蛭子さんのツーショットをパシャリ!蛭子さんはニッコリ!――そんな微笑ましい光景を横目に、僕は展示作品をじっくり見て歩きました。

不条理と風刺の蛭子ワールド

「どこからこんな発想が生まれてくるんだ!?」という不条理な一枚絵作品の数々。人面瘡のような人間の顔と大きな目が印象的な《上を見るな》。女性の首がニューっと伸びる《何だこれ!!》。たくさんの生首が連なって飛行する《顔の列》。まるで悪夢のワンシーン!!

新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~

一方、猫が大股開きで座っている《くつろぐネコ》や、虫と男とが酒を酌み交わしている《淋しい生活》など、蛭子さんの人生観が垣間見える、風刺のきいた作品にはクスッとさせられました。

新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~

蛭子さんのマンガを楽しむ

あらゆるジャンルの蛭子作品を見られるのも「新春えびすリアリズム」の魅力です。

10年以上前に読んだっきりの『黒いギャンブラー』を久しぶりに読み直して、僕は懐かしさに耽りました。「これぞ蛭子節炸裂!!」というべき『不条理でポン』は、ちょっとブラックな味わいでニヤリとさせられます。原画が一緒に展示されているので、蛭子さんの生の筆跡も見られます。ヨダレが出ますね(笑)。

新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~

蛭子さんとしては珍しい子ども向けマンガ「特急列車」。シュールな展開ではなく、読者に大切なことを訴えかけるストーリーです。一方、撮影禁止の18禁ゾーンには、僕が高校時代に読んで感動したマンガの数々が……。子ども向けマンガと18禁マンガを見比べてみると楽しいですよ。

新年早々縁起がいい「新春えびすリアリズム」

僕は、イカ臭い高校時代を思い出しながら、「新春えびすリアリズム」で1時間以上ウロウロしました。一枚絵作品にジッと見入ったり、マンガを読み耽ったり、18禁コーナーに何度も出入りしたり……。

やっぱり蛭子さんのヘタウマな絵は最高!僕の青春ですっ!!

黒いギャンブラー (バンブー・コミックス)

中古価格
¥480から
(2022/12/10 10:57時点)

「おみくじボール」の結果は?

「新春えびすリアリズム」には、「おみくじボール」という台があります。右端からボールを飛ばして、そのボールが入ったポケットに吉凶が書かれています。

新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~

僕も「おみくじボール」をやってみました。結果は「中吉」。まあ、そんなもんです。

他にも、蛭子さんのパネルと一緒に写真を撮れる撮影スポットや、『生きるのが楽になる まいにち蛭子さん』(日めくりカレンダー)などのグッズがある物販コーナーなど、蛭子ファンにはたまりませんね。

生きるのが楽になる まいにち蛭子さん(日めくり)

新品価格
¥1,100から
(2022/12/10 10:53時点)

「えびす名言みくじ」のありがたいお言葉

「新春えびすリアリズム」は、入場のときに「えびす名言みくじ」を引けます。僕が引いたおみくじには、「お金が入って急に生活を変えるのはよくないよ」と書かれていました。

貧乏時代を経験している蛭子さんの金銭感覚は、裕福になった今も昔と変わりません。贅沢品やグルメにお金を使わず、「自分にちょうどいいペースで暮らしたほうが絶対楽しい」といいます。そんな蛭子さんのありがたいお言葉が心に染みて、眼がしらは熱くなりました。

もっとも、お金が入ってくる予定がない僕の生活は、どこをどう頑張っても変わりようがないのですが……(笑)。

「新春えびすリアリズム」は、新年早々、本当に縁起のいい展覧会です。蛭子ファンに限らず、誰もが楽しめます。一年の始まりに、ポップでシュールな世界を散策してみてはいかが?

「新春えびすリアリズム~蛭子さんの展覧会~」開催概要

  • 会場:PARCO MUSEUM パルコミュージアム(渋谷パルコ パート1・3F )
  • 期間:2016/01/01 (金) -2016/01/18 (月) (開催終了)
タイトルとURLをコピーしました