KAZAWA☆第13回公演「あなたとしたい」@浅草リトルシアター

KAZAWA☆第13回公演「あなたとしたい」@浅草リトルシアター

昨日、KAZAWA☆第13回公演「あなたとしたい」を観劇した。

1年前にも配信で観た劇ではあるが、リアルで観ると迫力が違うし、配信のときとは違った発見もあって面白かった。その面白さをネタバレしない形で書き記しておこうと思う。

※広告配信の都合上、一部の言葉を言い換えているため、やや不正確な情報になっていることはご容赦願いたい。正確な情報はこちら

ストーリーは、伝説の女優・赤城璃子(若林美保さん)と、彼女を巡って葛藤する3人の男性――映像監督・黒崎剣児(間天憑さん)、恋する帰国子女・片岡昭三(岡本高英さん)、人気YouTuberのカウンセラー・アフロディーテ水瀬(風間寛治さん)――が織り成す「大人の恋愛」だ。

登場人物はたった4人だが、その分一人一人の人物がしっかり掘り下げられていて、ストーリーに深みがある。誰に対しても感情移入できるため、観劇中に心が揺れ動いて、目頭が熱くなることも……。

赤城は、過去を隠しながら女手一人で一生懸命娘を育てているが、その過去を後悔したり恥じたりするのではなく、むしろ誇りに思っている。そのため、再会した黒崎からの提案に応じ――。

若林美保さんは赤城の役にぴったりはまっている。若林さんも常に自らの活動に誇りを持っていて、それが「かっこよさ」として演技に現れているからこそ、僕や他のファンの人たちを魅了してやまない。赤城のセリフのいくつかはおそらく若林さんの本心で、それがステージ上から伝わってくるのだ。

一方、赤城に思いを寄せる黒崎片岡は対照的に描かれる。黒崎は仕事の提案を口実として強引に赤城に迫る。その真意は最初の段階から何となくわかるのだが、水瀬の口からはっきり断言され、「やっぱりね」となると同時に、同じ男として黒崎の不器用さについ同情してしまう。ろくでもないことをやらかす黒崎だが、どうしても憎めないところを間さんは上手く演じて見せる。

片岡の方は純粋でとてもわかりやすい。ただ、そうであるからこそ、あと一歩を踏み出せない優柔不断さがあり、これもまた同じ男として同情してしまう。過去のトラウマを胸に秘めつつ、「自分の居場所」を探す片岡の姿は、現代を生きる若者像として多くの人たちが共感できると思われる。岡本さんの演技が光っている。

複雑に絡み合う他の3人の間を取り持つのが水瀬だ。独特の語り口調や大げさな身振り手振りから一見すると「変人」だが、その言葉の一つ一つは本質を突いていて、次々と僕の心に刺さっていった。決して感情的にならず、冷静に物事を観察し、必要に応じて迷える者たちへの助言を行う――。水瀬のような人生の先輩が身近なところにいたら、自分もきっと安心して生きていけるだろう。そんな水瀬の役はやはり風間さん以外にはあり得ない。魅力的な「漢」とはこうあるべきだ。

個性的な4人の登場人物を個性的な4人の役者さんが演じ、それぞれの人間像がきっちり浮かび上がってくる。この4人だからこそ成立する劇と言っても過言ではない。観劇中はずっと「どういう生き方がかっこいいのか?」「人を好きになるとはどういうことか?」などと考え、そして4人の言動を通して自分なりの答合わせをしていった。

会場の浅草リトルシアターはとても狭い空間で、役者さんたちの熱だけでなく、他のお客さんの感動もひしひしと伝わってくる。これは映像ではなかなか味わえないリアル演劇の醍醐味といえるだろう。

KAZAWA☆第13回公演「あなたとしたい」は、ちょっとHな要素やプッと噴き出すシーンもあり、笑いあり涙ありの素敵な劇だ。是非とも多くの人たちに観てもらいたい。

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