TOCANA配給映画『食人雪男』

先日、TOCANA配給映画『食人雪男』を鑑賞した。

監督は新鋭ジャマール・バーデン、脚本はJ・D・エリス。原題の“Abominable”は「忌まわしい」という意味で、「忌まわしい」雪男が雪山への侵入者を容赦なく葬っていくというストーリーだ。

男女で構成された探索隊が、すべての病を治すという奇跡の薬草「雪男草」を求めて山に入り、不思議な空間の中で雪男に追い詰められ、一人、また一人……と命を落としていく。探索隊メンバーそれぞれに思惑があり、仲間割れする場面もあるが、それほど深く人物像や背景が描かれるわけではない。主役はあくまでも雪男と雪男草なのだろう。

一番の見どころは、雪男が探索隊メンバーを屠っているシーンだ。体の一尾を引き裂いたり、首を噛み千切ったり、顔面を剥ぎ取ったり……。まあ、やりたい放題。こうしたシーンを特殊メイクを使ってリアルに表現しているので、グロ耐性が無い人には酷だろう。逆に、そういうのが好きな人なら、思わず見入ってしまうこと間違いなし。僕はもちろん後者だ(笑)

凄惨なシーンを強調するという意味では、登場人物を前面に出さないのは正解だと思う。真っ白な雪にピシャッと飛び散る赤い色こそが『食人雪男』を象徴しているといっても過言ではない。監督のインタビューにもある通り、「鑑賞者に本物を伝えるために頑張っているのだという意識」が滲み出ていた。

それから、個人的には、男性メンバーのヘタレっぷりが面白かった。雪男と戦っても、悉く役に立っていない印象だ。「どうしてそっちの方向に銃を撃つのかな?」などとツッコみたくなるが、ツッコむまでもなく、雪男に憐れな姿にされてしまう。彼らの行動にはコミカルさすらあるのだが、凄惨なシーンを中和する役割を果たしていて、なかなか良い味を出しているのではないだろうか?

一方で、女性メンバーはたくましい。それぞれに思いがあって、雪男草への執着をきちんと行動で示している。一方的に屠られて終わりではない。女性の強さを強調する上でも、やはり男性はヘタレでなくてはならない(笑)

雪男は山の守り神という位置づけで、パッと見ゴリラみたいだが、どうも不死身の存在らしい。至近距離から銃撃されてもぶっ倒れないので、到底人間が敵う相手ではないのかもしれない。動きも素早く、ふと姿を消して、次の瞬間にメンバーに襲いかかっている、といったシーンが恐怖を演出する。実際にこんな雪男には遭遇したくない……。

日本もあと数か月で冬になり、地域によっては雪が降る。その前に『食人雪男』を観ておくと、スキーなどで雪山に入るのがきっと怖くなるだろう。

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