「まるかつ無料食堂」の苦悩を考える!善意の大盤振る舞いは難しい?

奈良市神殿町にあるトンカツ店「まるかつ」では、2018年から「まるかつ無料食堂」を続けている。店長の金子友則さんが「本当に困っている人を助けたい」という思いから始めたプロジェクトだ。しかし、2021年3~4月ごろから「元気でお金もある印象の人」による弁当の大量注文が激増して困惑気味なんだとか……。

金子さんの善意はすばらしい。その善意を批判するつもりはないが、やはり見通しが甘かったのではないかと思う。

無料で食事を提供するとなると、利用者を限定したり、何らかの条件を付けたりしないと、本当に困っている人以外の利用も必ず生じる。「まるかつ」のように、ニュースで報じられたり、ネット上で話題になったりして有名になれば、なおさら「無料」に惹かれてやって来るろくでなしが増えていく。

無差別の無料を続けたいのなら、「無料」に群がってくるろくでなしをも受け入れる度量が必要だ。国境なき医師団は「どこの誰であっても助ける」という姿勢を貫くが、このくらいの心構えでないと続かない。

一方、大企業がサンプルを街中で配布するように、宣伝目的ならばまた話が別だろうが、「まるかつ」は知名度アップを目的としているわけではなさそうだ。

寛容の精神を掲げるか宣伝を目的とするのでないのなら、やはり善意の大盤振る舞いは避けた方が賢明だろう。金銭がらみの場合はなおさらである。金子さんらが精神的・経済的に追い詰められていく一方で、ろくでなしばかりが得をする――そんな状況は、外部から見ている者にとっても辛い。

公的機関や大企業ならば、善意の活動であっても公平性の担保が大切だ。「ある人には無料で、別の人には有料」ということをすれば、クレームが殺到して、場合によっては訴訟に発展する。それにいちいち対応するリスクやコストを考えれば、「全員無料or全員有料」の二択にするか、二択にしないならば無料となる人に厳格な条件を付すか、のいずれかになるだろう。

一方、個人で運営しているのなら、善意の活動の中で「区別」を設けることも問題ない。長い付き合いの中で信頼関係を築いた人には、時と場合によって無料にする――。これなら店も客もハッピーだ。「あの人が無料なのはなぜ?」というクレームが来ても無視すればいい。あくまでも個人対個人の関係であり、そこに水を差す権利は誰にもないからだ。

僕も何年か前までは家庭教師で無料相談や無料体験を行っていた。しかし、初めから契約する気が無い人たちがプロからアドバイスをもらおうとして利用するケースが多く、僕は「時間と労力の無駄だ」と判断して無料をやめた。

個人事業主であればこそ、「無料」を掲げてはいけない。個人の時間も労力も有限である。そんな有限な資源を、「無料」に群がってくるろくでなしのために使ってはいけない。今ではそう思っている。

金子さんが今後、どのような方針で「まるかつ無料食堂」を続けていくのかはわからない。絶望してやめてしまうかもしれない。僕は善意の大盤振る舞いがどうなるのかを見守っていきたい。

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