朝の4時頃に目が覚めたので、スマホをいじっていた。
広告にハルノ晴『あなたがしてくれなくても』があったので、無料で読めるところまで読んでみた。
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32歳OLに吉野みちは陽一と結婚して5年だが、2年前からレスの状態。夫婦仲が悪いわけではないが、レスであるために満たされないみちは、会社の男性先輩社員、新名誠(36)と飲んだとき、思わず夫婦生活の不満を打ち明けてしまう。そうしたら、意外なことに新名もレスであると言って……。
何となく先の展開は予想できるが、無料部分だけだと、実際に先まで読めない。とりあえず読んだところまでの感想。
みちと陽一のような夫婦は案外多いのかもしれない。体のつながりを求めるわけではないが、決してお互いを嫌いなわけではない。とはいえ、夫婦生活からは初期の高揚感が失われ、惰性で続いていく。
みちが陽一に求めるのは、することを通して得られる精神的なつながりだ。
そんなことを考えているみちだが、後輩社員の北原華の言動からハッと気づかされる。華は彼氏と別れたことをみちに伝えたとき、「私一人の人と長く続かないんですよ / 1年位でトキメキってなくなるじゃないですか―― / 私トキメキないとダメなんですよねー」と軽く言う。
男女関係で大切なのはトキメキ。
みちは、陽一との間で失われたトキメキを取り戻すため、豪華な料理を作ってみる。この日は、陽一とすることを約束していた日――。しかし、生理になってしまい……。結局上手くいかない。
一方、陽一の方は単に面倒だからみちの体を求めない。むしろ、「そんなしょっちょう言われるとしたくなくなるんだよ / プレッシャーなんだよ!」とみちに言うほど、みちの「したい」アピールが煩わしくなっていく。
みちの方はプレッシャーをかけているつもりはない。「私その間何か言った?プレッシャー与えたりした?」と拳を握りしめる。しかし、言葉の端々や態度の端々に「したい」という思いが滲み出ている。
陽一がそれを感じ取っていたのは事実。僕も同じ男として、陽一が嫌がる理由もよくわかる。
そんなみちと陽一のすれ違いが、陽一がみちにプレゼントしたキーケースに象徴される。
みちにとっては趣味でないが、結婚当初に陽一からもらって使い続けていたキーケース。それが5年後に壊れてしまったことがきっかけで、みちと陽一の間にある溝が露呈する。
ストーリーの展開に小物を絡めるのは印象的だ。リアルな世界でも、夫婦の平穏はほんのちょっとした出来事から亀裂が入っていく。何気ない言動が相手の心に深く刺さり、そこから怒涛の如く自体は思わぬ方向に……。それを巧みに描いている。
無料部分終盤は、視点が陽一に変わる。妻側の視点と夫側の視点の両方から語るのも、出来事を多面的に描写する上では効果的だ。が、ここで無料部分は読み終わったので、あとはいつか続きを読める日が訪れれば読もうと思う。
みちと陽一の気持ちが丁寧に描かれているだけでなく、その気持ちの変化を登場人物の言動やキーケースのような小物を通して見せる技法が、個人的には好みだった。自分の表現の参考になる。
そして、レスな夫婦の日常は至って普通のもの。そこから浮気につながっていく展開も、現実ではよくあることだろう。僕は結婚していないが、結婚している人には思い当たる節があって、彼らはこのマンガを貪るように読むに違いない。ターゲットとなる読者層の心を動かすものがあると思われる。
技法的な点以外の僕の感想は「結婚は面倒臭い」だった(笑)