高校時代に深夜枠で放送されていたドラマ『エコエコアザラク』を数十年ぶりに観た。
当時は予約録画して観ていたのだが、プロ野球の延長などでしばしば録画に失敗して、全話を見た記憶がなかった。というよりも、ほとんどすべての記憶がなかった(笑)
改めて最初から最後まで観ると、記憶に残っているシーンがところどころにあって、懐かしい気持ちになった。
僕は古賀新一の原作マンガが好きだ。黒井ミサは、魔術を使って、悪人だけでなく善人すら手にかけるダークヒロインで、その邪悪さが何よりも僕の感性に合致していた。一方で、女子中学生・女子高生らしい間抜けな姿を見せることもあり、話によって同じ主人公とは思えないギャップがあり、それはそれでおもしろい。
特に『エコエコアザラク II』は、ホラー漫画雑誌『サスペリア』に掲載されたこともあり、黒井ミサのおどろおどろしさが強まっていた。小学時代に『サスペリア』を立ち読みしながら、何度も黒井ミサに恐怖を味わわされた。
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そんな思い出深いマンガの実写版なので、高校生だった当時も、そして大人になった今も、原作と比べていろいろ思うところがあった。
黒井ミサを演じた佐伯日菜子ははまり役として評価が高かったそうだが、「実際に黒井ミサがいたら、きっとこんな感じだよね」と思った。そこそこ可愛いけれど、美人過ぎない。どこか暗い部分があり、敵に対しては冷たい視線を投げかける。原作の黒井ミサのイメージにぴったりだ。
ストーリーに関しては、大人が鑑賞することを前提としたエログロ描写はあるものの、全体的に勧善懲悪っぽい流れで、原作の黒井ミサのダークな雰囲気はトーンダウンしている。Amazonのレビューでは高評価が多いが、僕としてはもっとドロドロした黒井ミサを見たかった。
個人的に好きなのは10~12話の「ヘカテ」シリーズと、17~19話の「七の封印」シリーズだ。
前者は、古代の魔術と現代のネット技術がリンクするという、ありきたりといえばありきたりなストーリーだが、街中に描かれた紋様や特殊能力を持つ兄妹、人間を操る香水、都市伝説として語られる黒井ミサなど、細かい設定がよく練られている。
後者は、次々と友達が変死していく中で女子高生・黒井ミサが追い詰められていく展開に引き込まれる。魔術を使って何でも解決してしまう黒井ミサが魔術を封じられ、誰一人として助けられないという、救いのなさが心地よい。最後の最後でクライマックスに向けた黒幕の存在が示唆される。
中には演出の凝った話もあった。5話「隣の女」では、裏路地を何度も行ったり来たりさせられたり、無人のバーに行き付いたりするシーンが印象的だった。14話「嫉妬」では、黒井医院へと続く道が昭和の雰囲気を醸し出していた。他にも、長く続く階段や廃墟となったボーリング場、村へと続く橋など、ストーリー以上に記憶に残る場所が多く、現代社会の中に残っている”異界”を垣間見ることができる。
また、22話「魔女裁判」は、全体の中でもかなり異色な演出がなされていて、悪夢の中のワンシーンを見ているようだった。最終話「聖戦」でも、過去の記憶と現実とを行ったり来たりすることで、黒井ミサの苦悩が際立っていた。
高校時代に好きだったドラマを大人になってから観直すと、捉え方や感じ方が全然違っている。当時は理解できなかったことが理解できたり、新たな気づきがあったりする。まさに温故知新だ。
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