【一条桟敷屋の鬼2】形容詞の活用と「なん」の識別を理解しよう!

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妖怪博士の古文講座

今回から、『宇治拾遺物語』「一条桟敷屋の鬼の事」を読解する上でのポイントを解説していきます。前回の記事を読んでいない人は、前回の記事から読むといいですよ。

>>復習:【一条桟敷屋の鬼1】主語を把握して古文を正確に読解しよう!

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形容詞のカリ活用はラ変?

今は昔、一条の桟敷屋にある男とまりて傾城と臥したりけるに、/夜中ばかりに風吹き雨降りてすさまじかりけるに、/大路に 「諸行無常」と詠じて過ぐる者あり。/

この文の「すさまじかりけるに」を品詞分解してみましょう。品詞分解とは、文や文節などを品詞(=単語)レベルに分けることですね。

狸央
「すさまじ/かり/ける/に」ですか?
みみずく
「かり」って何?
狸央
分かりません……

「すさまじかりけるに」の品詞分解では、狸央のように間違う生徒が多いですね。そんな生徒は、形容詞の活用をきちんと理解しましょう。

たとえば、「なし」という形容詞は、助詞の「て」に接続すれば「なくて」になります。助詞の「ども」に接続すれば「なけれども」です。

「なし」が「なく」や「なけれ」などになるように、ある単語の形が変わっていくことを活用といいます。「なし」の「な」のように、助詞などに接続しても形が変わらない部分が語幹。「し」のように、形が変わる部分が活用語尾。そして、語幹や活用語尾をまとめたのが活用表です。

というわけで、形容詞の活用表を確認しましょう。

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形容詞にはク活用とシク活用があって、活用語尾が2列になっています。右側の「((し)く)・(し)く・し・(し)き・(し)けれ」が本活用、左側の「(し)から・(し)かり・〇・(し)かる・〇・(し)かれ」がカリ活用(補助活用)です。カリ活用の終止形と已然形を書き込むと……

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夢狐
あっ、カリ活用がラ変(ラ行変格活用)の「ら・り・り・る・れ・れ」と同じになってるわ!

夢狐の言う通り、カリ活用はラ変です。なぜなら、カリ活用は、形容詞の本活用の連用形「(し)く」にラ変動詞「あり」が接続した「(し)くあり」がなまって「(し)かり」になったものだからです。だから、形容詞の活用は本活用だけ覚えて、「カリ活用はラ変と同じ。ただし、終止形と已然形は無し」と考えればOKです。

「く・から・く・かり……」という変な歌を推奨する古典教師がいますが、そんなのはナンセンス!「変な歌を歌っちゃダメ!」とは言いませんが、形容詞の活用については本質から抑えた方が理解しやすいし、助動詞の活用にもつながってきます。古典に限らず、高校の勉強では本質の理解を大切にしたいところです。

みみずく
ここまで解説すれば、「かり」が何なのか分かるだろ?
狸央
形容詞「すさまじ」のカリ活用連用形の活用語尾です。じゃあ、「すさまじかりけるに」の品詞分解は「すさまじかり/ける/に」ですね!

品詞分解すさまじかりけるに → すさまじかり/ける/に

・すさまじかり … シク活用形容詞「すさまじ」の連用形(カリ活用)

・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

・に … 格助詞

「すさまじかりけるに」と同じように考えると、次の「恐ろしかりけり」の品詞分解も分かるはずです。

(鬼は)百鬼夜行にてある遣らん/と(男は)恐ろしかりけり

形容詞「恐ろし」のカリ活用連用形は「恐ろしかり」なので、「恐ろしかり」で一語です。したがって、品詞分解は「恐ろしかり/けり」となります。

品詞分解恐ろしかりけり → 恐ろしかり/けり

・恐ろしかり … シク活用形容詞「恐ろし」の連用形(カリ活用)

・けり … 過去の助動詞「けり」の終止形

打消の助動詞「ず」の活用

(男は)それより一条の桟敷屋にはまたも宿らざりけるとなん

「宿らざりけるとなん」も品詞分解してみましょう。これは、「宿ら/ざり/ける/と/なん」と品詞分解できます。「ざり」は、打消の助動詞「ず」の連用形です。

みみずく
ところで、「ず」の活用を全部言えるかい?
狸央
ええっと……
みみずく
怪しいようだから、ここで「ず」の活用をまとめよう。

妖怪博士と楽しむ古文講座

助動詞「ず」の左側の活用も、連用形「ず」にラ変動詞「あり」が接続した「ずあり」がなまったものだから、ラ変と同じです。「ず」は活用の型が特殊型ですが、覚えるべきは右側の「(ず)・ず・ず・ぬ・ね」だけ。

このように、形容詞の活用の考え方が「ず」の活用でも活きてきます。こういうのを応用力といいます。形容詞の活用を「く・から・く・かり……」と歌っている人は絶対に気付けないことですね。

「なん」の識別

「宿らざりけるとなん」を「宿ら/ざり/ける/と/なん」と品詞分解したところで、次に「なん」を文法的に考えます。

「なん」の識別は入試でも頻出です。こういう識別の問題は、簡単なものから考えるのが鉄則です。そこで、「なん」の識別方法をまとめました。

文法【「なん(なむ)」の識別】

① ナ変動詞の未然形+助動詞「ん(む)」の終止形/連体形

② 動詞の未然形+願望の終助詞「なん(なむ)」

③ 動詞の連用形+助動詞「ん(む)」の終止形/連体形

④ ①②③以外は係助詞「なん(なむ)」

まずは、①から。ナ変動詞は「死ぬ」と「往(い)ぬ/去(い)ぬ」の2語です。これらの動詞の未然形「死な」「往(去)な」に助動詞「ん」が接続すると、「死なん」「往(去)なん」になります。したがって、「死なん」「往(去)なん」を見たら①と判断します。

みみずく
助動詞「ん」の意味は複数あるので、「死なん」の口語訳は、文脈によって「死ぬだろう」や「死のう」になるんだ。

②と③の識別は、四段動詞ならば一発だ。たとえば、「言ふ」の未然形と連用形はそれぞれ

「言は」「言ひ」です。このことから、「言はなん」は②で、「言ひなん」が③と識別できますね。「なん」に四段動詞が接続している場合、「ア音+なん」が②で、「イ音+なん」が③です。口語訳は、「言はなん」は「言ってほしい」で、「言ひなん」は文脈によって「きっと言うだろう」「きっと言おう」となりますよ。

夢狐
ラ変動詞も同じで、「あらなん」なら②、「ありなん」なら③ですね!サ変動詞「す」は、「せなん」が②、「しなん」が③と考えればいいわ!

困るのはその他の動詞。カ変動詞は、「こなん」なら②、「きなん」なら③ですが、「こ」や「き」が「来」と漢字表記されたら識別できません。また、未然形と連用形が同じ形をしている上一段、上二段、下一段、下二段は、そもそも識別しようがありません。「与へなん」は②と③のどちらでしょうか?

こういう場合は文脈判断をします。ただし、文脈判断は最後の切り札で、めったやたらに使ってはいけません。古典でも英語でも、訳の手順は「文法→文脈」が王道です。それを逆にして、何でもかんでも文脈から判断しようとする生徒がいますが、そういうおバカさんは誤読しますよ。

狸央
今回の「なん」は、「なん」の直前にそもそも動詞が無いので①②③じゃない。つまり、④の係助詞です!
みみずく
正解!係助詞「なん」は強意なので、訳さなくてOK!

結びの省略で省略語を補う

「なん」が係助詞だと分かったところで、係助詞で文が終わるのは不自然ではないでしょうか?

ここには、結びの省略があります。係助詞を受けて結ぶ語が省略されているんですね。「となん」の後ろには、「~という。」という意味になるように「いふ」を補います。

狸央
「いふ」に助動詞を付けちゃダメですか?

ダメではないでしょうが、注意事項があります。係助詞「なむ」の結びの語は、必ず連体形にします。たとえば、過去の助動詞「けり」を付けるなら「いひける」、伝聞の助動詞「なり」を付けるなら「いふなる」です。終止形の「いひけり」や已然形の「いふなれ」は間違いになります。もちろん、「となむいふ」の「いふ」も、終止形ではなく連体形だから気を付けましょう。

品詞分解宿らざりけるとなん → 宿ら/ざり/ける/と/なん

・宿ら … ラ行四段活用動詞「宿る」の未然形

・ざり … 打消の助動詞「ず」の連用形

・ける … 過去の助動詞「けり」の連体形

・と … 格助詞

・なん … 係助詞

一条桟敷屋の鬼3】へ続く

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