【一条桟敷屋の鬼1】主語を把握して古文を正確に読解しよう!

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妖怪博士の古文講座

皆さん、はじめまして。家庭教師のみみずくです。

「妖怪博士の古文講座」では、僕の趣味全開で、妖怪や幽霊などが登場するオカルト古典文学を読んでいきます。古文が苦手な現役高校生や大学受験生の役に立つように、単語や文法、古文常識なども紹介していきます。

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古文が読みにくい理由

みみずく
実際に古文を読む前に、古文読解の心構えをお伝えします。とりあえず、僕の教え子2人に自己紹介してもらいましょう。
狸央
七不思議高校2年の隠神狸央(いぬがみりお)です。僕の父は、愛媛県の松山城を守護する隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)です。僕は古文が大の苦手で、古文を読むと思わず尻尾を出して……いえ、何でもありません。
夢狐
七不思議高校2年の九尾夢狐(きゅうびゆめこ)です。祖母の玉藻前(たまものまえ)は、中国とインドを旅した後、日本にやって来ました。祖母のように偉い人をたぶらかして……ではなく、知的な美人になることを目標に、古文を勉強したいと思います。

2人とも古文があまり得意ではありません。というか、ほとんどの高校生は、「読めないから」「理解できないから」という理由で古文を苦手としています。そんな彼らは頭が悪いのでしょうか?

それは違います。古文を読めない高校生は、頭が悪いわけではありません。もちろん、勉強不足はあるかもしれませんが、しっかり勉強した生徒にとっても、古文は決して読みやすい文章ではないはずです。というのも、現代に生きる我々の感覚からすると古文が悪文だからです。具体的には、古文が読みにくい原因は次の2点です。

① 一文が長い。

② 主語や目的語が頻繁に省略される。

①と②は、現代語の作文技法では「読みにくいからNG」とされます。作文の試験で減点対象になるくらいです。

①と②を特徴とする古文が読みにくくて理解しにくいのは当たり前。逆に、「古文が読みやすくて理解しやすい!」と言う人がいれば、その人は平安時代からタイムスリップしてきたんでしょうね(笑)

とはいえ、古文は高校の必修科目で受験科目にもなっています。だから、悪文でも何でも、読めるようになる必要があります。でも、その勉強の中で、「自分は頭が悪い」と落ち込んではいけません。むしろ、「悪文の古文を読もうと頑張っている自分はエライ!」と自分を褒めてあげましょう。

みみずく
古文は、君たちが書く下手くそな作文と同じレベルの悪文なんだよ
狸央
下手くそな作文?失礼なっ!
みみずく
失礼も何も、君たちが書いた作文を採点したり添削したりする僕の身にもなってほしいな(笑)

主語を把握するためのルール

今から読んでいくのは『宇治拾遺物語』「一条桟敷屋の鬼の事」です。原文・口語訳・問題は、以下のページからダウンロードしてください。

>>教材ダウンロード:無料プリント

『宇治拾遺物語』は、鎌倉時代前期に成立したとされる説話集です。説話とは、昔から語り伝えられてきた民話や伝説などで、妖怪や幽霊が登場する話もたくさんあります。『宇治拾遺物語』には、本朝(ほんちょう=日本)・天竺(てんじく=インド)・震旦(しんたん=中国)の三国を舞台にした説話が収録されています。

文学史『宇治拾遺物語』は、鎌倉時代前期に成立したとされる説話集。本朝・天竺・震旦の三国を舞台にした説話が収録されている。

説話に限らず、あらゆる古文を正確に読み解くには、主語をきちんと把握する必要があります。そのためのルールは次の3つです。

文法【主語把握のルール】

① 「名詞、~」 → 名詞が主語(100%ではない)

② 「て」「で」の前後 → 主語は同じ(100%ではない)

③ 「を」「に」「ば」の前後 → 主語は違う(100%ではない)

まずは①。たとえば、「女、言ふ。」という文は、「言ふ」に対する主語が名詞の「女」です。「女」と「言ふ」の間に「が」が省略されているので、それを補って「女が言う。」と訳します。

次に②。これは現代語でも同じです。「A君は勉強して、寝た。」という文では、「勉強した」のも「寝た」のも「A君」ですよね?このように、「て」「で」で結ばれた2つの述語に対する主語は基本的に同じです。「女、言ひて泣く。」だったら、「言ひて」の主語も「泣く」の主語も「女」です。

最後に③。古文では、「を」「に」「ば」の前後で主語が変わりやすいんですよ。たとえば、「女の言ふを聞く。」だったら、「言ふ」の主語は「女」ですが、「聞く」の主語は少なくとも「女」ではありません。「女」が自分の言ったことを聞くのはオカシイからです。

狸央
を・に・ば、を・に・ば……オニババア!
みみずく
そう、「オニババアの法則」だ。オニババアに出会ったら主語が変わるんだ!

古文読解ですべきこと

夢狐
ルールが分かったところで、具体的に何をすればいいんですか?

これから古文を読むときは、次の3つを必ず行いましょう。

文法【古文読解ですべきこと】

① 主語には印を付ける。

② 主語の変わり目には「/」(スラッシュ)を入れる。

③ 省略されている主語を書き込む。

実際に「一条桟敷屋の鬼の事」で練習しますね。

今は昔、一条の桟敷屋にある男とまりて傾城と臥したりけるに、/夜中ばかりに吹き降りてすさまじかりけるに、/大路に 「諸行無常」と詠じて過ぐる者あり。/

1文目は、主語が明示されているので、それらに印(〇で囲むなど)を付けます。さらに、主語の変わり目に「/」を入れます。

こうやって主語を確認すると、「に」の前後で主語が変わるので、「オニババアの法則」が成り立っていると分かります。

ちなみに、情景描写がある場合は、「主語が何かな?」と深く考える必要はありません。この文だと「夜中ばかりに風吹き雨降りてすさまじかりけるに」が情景描写です。こういう部分はサラッと流し読みしましょう。

男は)何物ならんと思ひて蔀を少し押し開けて見ければ、/長は軒と等くて馬の頭なるなりけり。/

「オニババアの法則」で、「ば」の前後で主語が変わると判断します。でも、「ば」の前の「押し開けて見ければ」の主語が明示されていなません。ここは、桟敷屋の中にいる人、つまり「男」が主語だと考えます。省略された主語の「男は」を文の冒頭に書き込むといいですよ。

この調子で、残りの文章も主語を把握していきましょう。

男は)おそろしさに蔀をかけて奥の方へ入りたれば、/この鬼格子押し開けて顔をさし入れて、「能く御覧じつるな、御覧じつるな」と申しければ、/(男は)太刀を抜きて、/(鬼が)入らば/(私=男が)斬らんと構へて女をばそばに置きて待ちけるに、/(鬼は)「能く能く御覧ぜよ」と云ひて去にけり。/(鬼は)百鬼夜行にてある遣らん/と(男は)恐ろしかりけり。(男は)それより一条の桟敷屋にはまたも宿らざりけるとなん。

夢狐
すごい!主語が分かったら、古文がとても読みやすくなったわ!

「傾城」とは何か?

狸央
先生!「傾城」って何ですか?

「傾城」は、『漢書』外戚伝の「北方に佳人有り。……一顧すれば人の城を傾け、再顧すれば人の国を傾く」に由来する言葉です。「佳人」は美人のことなので、「傾城」は美人を表します。

君主が美人にほれ込んで政治をサボってしまうと、国が混乱しますよね?このことを「美人が城や国を傾ける」と表現しています。「歴史の陰(かげ)に女あり」っていう格言があるくらい、昔から美女は男を惑わしてきたんですよ。

さて、「一条桟敷屋の鬼の事」に登場する「傾城」は、単なる美女ではなく遊女だったと考えられています。遊女とは、自らの性を売っていた人たちのことですよ。

狸央
ということは、「一条桟敷屋」は男女があんなことやこんなことをする場所で、「臥したりける」というのは当然……
みみずく
まあ、そういうことだね。これ以上は大人の事情で言えないけど(笑)
狸央
「一条桟敷屋の鬼の事」は、男と女のラブシーンから始まっているんですね!古文サイコー!
夢狐
男ってサイテー!

一条桟敷屋の鬼2】へ続く

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